近年、AIツールの台頭によって、様々な作業が効率化・自動化され始めており、その中で「WEB広告運用者という職業がなくなるのでは？」といった意見も出始めています。
結論から申し上げると、WEB広告運用者という職業がなくなる可能性は極めて低いです。
この記事では、現役のマーケターである私が、WEB広告運用の仕事がなくならない理由を解説します。未経験からWEB広告運用者としてのキャリアをスタートするための方法等も解説しているので、最後まで読んでいただけると嬉しいです。
広告運用者という職業がなくなると言われているのは『AIの影響』
近年、AIの進化と発展により、広告運用者という職業が将来的になくなるのではないかという議論が広がっています。AI技術の進歩は、広告運用の多くのプロセスを自動化し、効率化する可能性を秘めています。それでは、具体的にどのようなプロセスが自動化の影響を受けているのでしょうか。
入札調整の自動化
広告運用において、入札調整は極めて重要なプロセスの一つです。これにより、広告の表示頻度や表示位置が最適化され、広告主のROIが向上します。しかし、AIの進化により、この入札調整プロセスも自動化の波に飲み込まれつつあります。AIは、大量のデータをリアルタイムで分析し、最適な入札額を自動的に設定することができます。これにより、人間が行うよりも迅速かつ正確に入札調整が可能となり、広告運用の効率と効果が大幅に向上することが期待されます。しかし、完全な自動化が進む中で、運用者の役割や専門知識の重要性も再評価されているのが現状です。
広告クリエイティブの自動生成
広告のクリエイティブ制作もまた、AIの影響を大いに受けています。従来、クリエイティブの制作は、人間の感性や経験に依存する部分が大きかったのですが、AI技術の発展により、データベースのイメージやテキストを基に、効果的な広告クリエイティブを自動生成することが可能となりました。これにより、広告のテストや最適化が迅速に行えるようになり、マーケティングの効果を一層高めることができます。ただし、AIによる自動生成が進む中で、オリジナリティやブランドメッセージの統一性を保つためには、クリエイティブの方向性を定める人間の判断が依然として不可欠です。
ターゲティングやプレースメントの自動化
ターゲティングプレースメントの最適化も、AIの進歩によって新たな局面を迎えています。AIは、ユーザーの行動データや属性データを分析し、最も効果的なターゲット層を特定し、広告の表示面を自動で調整することができます。これにより、広告のリーチとコンバージョン率が向上し、広告主の投資効果が最大化されるのです。しかしこのプロセスでも、ターゲットの設定や広告の方向性を決定するための人間の洞察と判断力が、AIの精度を更に高める要素として重要視されています。
WEB広告運用の仕事がなくならない3つの理由
前述の通り、AIや機械学習の発展によってWEB広告運用の分野でも多くの業務が自動化の波に飲み込まれつつあります。しかし、WEB広告運用の仕事が完全になくなることはないと私は考えています。以下、その理由について詳しく解説します。
広告運用は「サービス業」である
WEB広告運用は、その本質においてサービス業であり、クライアントのニーズに応じて柔軟に対応する必要があります。AIや機械学習は、データ分析や最適化のプロセスを効率化することができますが、クライアントとのコミュニケーションや、クライアントのビジネスを深く理解し、そのニーズに合わせた戦略を構築する作業は、人間の感性や経験、専門知識が必要不可欠です。また、広告運用のプロセスにおいては、クライアントからのフィードバックを受け取り、運用戦略を迅速に修正・改善することが求められます。このような柔軟性や対応力は、現在の技術ではAIによって実現することは困難であり、人間の運用者の存在が不可欠です。
抜本的な戦略変更などは人間にしかできない
広告運用においては、市場環境やクライアントのビジネス状況の変化に応じて、抜本的な戦略変更を行うことが必要になることがあります。例えば、新たな競合の出現や市場トレンドの変化、クライアントのビジネスモデルの転換など、これらの状況変化に対応するためには、広範な知識と洞察力、創造性が求められます。AIはパターン認識やデータ分析に優れていますが、未知の状況に対する戦略構築や創意工夫は、人間の領域であります。従って、広告運用の仕事において、人間の役割は今後も重要であり続けるでしょう。
市場規模が拡大し続けているから
インターネットの利用者数の増加やデジタルマーケティングの重要性の高まりに伴い、WEB広告市場は拡大の一途を辿っています。この市場の拡大は、広告運用の専門家にとって、更なるチャンスと可能性を意味します。多様化する広告プラットフォームやマーケティングテクノロジーの進展により、広告運用の専門性や知識の要求が高まっており、専門的なスキルを持つ運用者の需要は今後も増加すると予測されます。市場の拡大と共に、広告運用者の役割や責任も多様化し、専門性が更に深まることで、運用者の仕事の価値は高まるでしょう。
AI台頭時代において、広告運用担当者に求められるスキル
AIの台頭により、広告運用のフィールドでは様々な変化が生じています。これにより、広告運用担当者に求められるスキルは、従来とは少し異なってきています。本トピックでは、この新しい時代において広告運用担当者が身につけるべきスキルについて詳しく解説します。
分析・改善スキル
AIの進化により、広告運用の多くのプロセスが自動化されつつありますが、分析・改善スキルは依然として重要です。AIはデータを処理し、パターンを識別することができますが、その結果を基に戦略を考え、改善策を実行するのは人間です。広告運用担当者は、AIが提供するデータや分析結果を正確に理解し、ビジネスの目標に合わせて最適な改善策を立案・実行する能力が求められます。具体的には、広告のパフォーマンスを定量的に評価し、コンバージョン率の向上やコストの削減などを図るための施策を考え出すことが必要です。このスキルは、広告運用の効果を最大化するために不可欠なものとなっています。
コミュニケーション能力
広告運用担当者の役割は、単に広告の運用や分析だけではありません。クライアントや他部門とのコミュニケーションも重要な業務の一部です。AIや機械学習の技術は進歩していますが、クライアントのニーズを正確に把握し、適切な戦略や改善策を共有・説明する能力は、人間にしかできないスキルです。特に、複雑なデータや分析結果をわかりやすく伝え、クライアントの理解と信頼を得ることが重要です。また、他部門や外部パートナーと効果的に協力し、広告キャンペーンの成功に向けて連携するコミュニケーション能力も求められます。
広告運用以外のWebマーケティングスキル
広告運用担当者は、広告運用だけでなく、SEOやコンテンツマーケティング、メールマーケティングなど、他のWebマーケティングの知識も必要とされます。これらのスキルを持つことで、広告運用の戦略をより広い視野で考え、効果的なマーケティングミックスを構築することができます。例えば、SEOの知識を活かしてランディングページの最適化を行うことで、広告のクリックからのコンバージョン率を向上させることができます。また、コンテンツマーケティングの知識を利用して、広告のクリエイティブやメッセージを最適化し、ターゲットオーディエンスの関心を引きつけることができます。これらの広告運用以外のスキルは、広告運用担当者がマーケティング全体の効果を高めるために重要な要素となります。
未経験からWEB広告運用担当者に転職する方法3つ
WEB広告運用は、デジタルマーケティングの中で非常に重要なポジションとなっており、多くの企業で求められているスキルセットです。未経験からこの分野に転職を考えている方も多いかと思います。本トピックでは、未経験からWEB広告運用担当者に転職するための具体的なステップを3つの方法を通してご紹介します。
独学でスキルを身につける
WEB広告運用の基礎知識やスキルを独学で身につけることは十分可能です。インターネット上には、広告運用に関する無料の学習リソースやチュートリアルが豊富に存在します。Google AdsやFacebook Adsなど、主要な広告プラットフォームは、公式に学習ガイドや資料を提供しており、これらを利用することで基本的な知識や操作方法を学ぶことができます。また、オンラインフォーラムやコミュニティに参加することで、他の学習者や経験者からのアドバイスやフィードバックを得ることもできます。独学には自己管理が重要となりますが、自分のペースで学べるメリットもあります。
WEB広告の勉強方法については下記記事で詳しく解説しています。
スクールでスキルを身につける
独学よりも体系的かつ効率的に学びたい場合、専門のスクールや講座の受講を検討するのも良い選択です。多くのスクールでは、WEB広告運用の基礎から応用までをカバーし、実践的なカリキュラムが提供されます。プロの講師から直接指導を受けられるため、質問や疑問を即座に解消できるのが大きな利点です。また、スクールでは他の受講生とのネットワーキングの機会も得られ、情報交換や協力学習が可能です。受講料が必要ですが、質の高い学習環境とサポートを受けられるでしょう。
未経験でも転職OKな会社をエージェントに紹介してもらう
未経験からWEB広告運用担当者に転職する際、転職エージェントのサポートを利用する方法も効果的です。転職エージェントは、未経験者歓迎の企業を紹介してくれるだけでなく、履歴書の作成支援や面接対策も提供してくれます。また、エージェントは企業のニーズや業界の動向に詳しいため、個々のスキルや経験に合った企業を紹介してくれるでしょう。エージェントを通じて企業とのマッチングを図ることで、未経験でもWEB広告運用の職に就くチャンスが広がります。エージェントの利用は無料で、転職成功までのサポートを受けられるため、転職活動の一環として活用すると良いでしょう。
まとめ
WEB広告運用者の仕事はなくならない
AIや機械学習の進展により、多くの業務プロセスが自動化されていますが、WEB広告運用者の仕事が完全になくなることはないでしょう。広告運用者は、クライアントのビジネス理解や戦略立案、コミュニケーションなど、AIでは代替不可能なスキルを持っています。また、市場の変化やクライアントのニーズの多様化に対応するためには、人間の判断や創造性が必要です。これらの要素から、WEB広告運用者の役割は今後も重要であり続け、専門性や知識を深めることで、更なるキャリアの展開が期待できます。
WEB広告運用はやりがいのある職種
WEB広告運用は、データ分析や戦略立案、クリエイティブな思考が求められる、やりがいのある職種です。広告キャンペーンの成功を追求する中で、様々な課題や問題に直面し、それを解決する過程は大変充実感があります。また、自らのアイデアや戦略がクライアントのビジネス成果に直結するため、成果を実感しやすいのも特徴です。さらに、デジタルマーケティングの世界は常に変化しており、新しい知識やスキルを学び続けることで、プロフェッショナルとしての成長を実感できます。このような経験を通じて、広告運用者は自己成長と同時に、クライアント企業の成長にも寄与できるのです。
マーケターのファーストキャリアとして広告運用はおすすめ
広告運用は、マーケターとしてのキャリアをスタートするにあたって、非常におすすめの職種です。広告運用を通じて、デジタルマーケティングの基礎知識や、市場分析、データ分析、戦略立案などのスキルを身につけることができます。これらのスキルは、マーケティングの他の領域でも共通して活用できるため、将来的に様々なポジションや業界への移動が可能です。また、広告運用の経験は、顧客理解やコミュニケーション能力の向上にも繋がり、マーケターとしての幅広い視野と深い理解を培うことができます。これらの理由から、広告運用は、マーケティングの世界に飛び込む第一歩として、大変適していると言えるでしょう。
私自身、新卒で入社した会社ではWEB広告運用の業務を担当していました。WEB広告は費やした広告費の効果がリアルタイムで管理画面上で確認できるため、直ぐに効果検証をして、改善に移すといった高速PDCAが必要になります。このPDCAを「早く」「徹底的に」行うという癖はWEB広告運用という職種だけでなく、別のフィールドにキャリアチェンジした際に強力な武器となりました。ぜひ皆さんみマーケターのファーストキャリアとして広告運用者という職種にチャレンジしてみてはいかがでしょうか？
